合弁会社とは何か?注意点や成功のポイントをわかりやすく解説

投稿日: 投稿者: M&A BASE

合弁会社とは複数社が共通の利益のために設立する企業です。どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?成功に必要なポイントや設立までの手順を押さえることで、合弁会社を効果的に活用しやすくなります。コストやリスクを抑えつつ、新規事業や海外進出へチャレンジしたいと考えているときに役立つ合弁会社について、詳しく見ていきましょう。

 

合弁会社とは?

合弁会社とは、2社以上がお互いに出資し合って設立もしくは買収する企業です。公正取引委員会の企業結合ガイドラインで「共同出資会社」とよばれている他、「ジョイント・ベンチャー(Joint Venture)」ともいい、頭文字の「JV」とよばれることもあります。

複数の会社が出資して合弁会社を設立したり買収したりするのは、共通の利益を目指しているためです。何を目指すかはケースによって異なります。

例えばお互いの持つ技術やノウハウ・流通経路などの資源を活用し合い効率化することや、新規事業や海外への進出にかかるコストやリスクを抑えることなどが代表的です。

1.「合弁会社以外の法人形態」との違い

会社法で定められている会社の種類は「株式会社」と、「持分会社」に分類される「合同会社」「合資会社」「合名会社」の合計4種類あります。この4種類と合弁会社との違いは、会社法の定めの有無です。合弁会社は会社法で定められていません。

合弁会社は共同出資で設立される会社の総称のため、株式会社として設立されることもあれば、合同会社として設立されることもあるでしょう。ケースによって最も適した形態で設立されます。

2.「合併」との違い

同じように2つ以上の企業が関わる「合併」との違いは、関わる企業が1つの会社になるかならないかです。

合併を行う2つ以上の企業は、新しく設立する企業か合併する企業のうちのいずれか1社に引き継がれ、1つの企業になります。

一方、合弁会社では2つ以上の企業が出資し合い、新しい企業を設立するか他の企業を買収します。出資している2つ以上の企業は、そのままの形態で存続し続けるのが特徴です。

3.「提携」との違い

2つ以上の企業が独立したまま存続しつつ、共通の利益や課題解決のために経営資源を出し合うことを「提携」といいます。

例えば流通を効率化するために倉庫や配送網を共有する、スケールメリットを生かすために材料を共同で発注する、企画力と技術力を出し合い新商品を開発するといったケースが代表的です。

合弁会社と似ていますが、出資を伴わないこともある点が異なります。

 

合弁会社のメリット・特徴

合弁会社を立ち上げるメリットは以下の通りです。

  • 新規分野への進出や新規事業の立ち上げがしやすい
  • 海外進出の足がかりになる
  • 合弁参加企業同士のシナジー効果が期待できる
  • コストや損失リスクを抑えられる

4つのメリットについて解説していきます。

1.新規分野への進出や新規事業の立ち上げがしやすい

自社のみで新規分野への進出や新規事業の立ち上げを行う場合、多くの資金を集めなければいけませんし、技術やノウハウの積み上げに時間がかかります。新たな分野や事業に従事する人材集めも必要です。

一から新しい事業を始める場合たくさんの先行投資をしなければいけませんが、いつから利益が出るようになるかは分かりません。投資した分を回収できないまま、新規事業をやめなければいけない事態も起こり得ます。

合弁会社を設立し新規分野へ進出したり、新規事業を立ち上げたりすれば、参加企業が持っている経営資源を活用可能です。

例えば1社が高い技術力を持っており、もう1社が販路を持っている状態で出資し合えば、より少ないコストで短期間のうちに成果を出しやすいでしょう。

2.海外進出の足がかりになる

企業の設立や運営については、国や地域ごとに異なる決まりが設けられています。外資系企業による企業設立が制限されている国や地域への進出を計画している場合、現地にある企業との合弁会社を設立することで、スムーズに進出しやすくなるでしょう。

国や地域ならではの商習慣や文化などに合わせた経営をするためにも、現地の企業との合弁会社設立が役立ちます。

日本国内でうまくいくやり方が、海外では機能しないこともあるでしょう。現地のことをよく知る企業と共同で合弁会社を経営できれば、現地の方法に適応しながら規模を広げられます。

3.合弁参加企業同士のシナジー効果が期待できる

合弁会社の設立に参加する企業同士で、お互いの強みを生かしシナジー効果を発揮できる可能性もあります。1社では実現できなかったことを成し遂げられるかもしれません。

お互いの経営資源を出し合って事業に取り組むことで、スピード感のある展開も期待できます。

4.コストや損失リスクを抑えられる

新しい事業を始めるときや、今ある事業を拡大するときには、コストがかかります。1社のみではコストが大き過ぎるため取り組めない事業も、2社以上が集まる合弁会社であれば実現可能性が高まるでしょう。

加えて損失のリスクを抑えられるのもポイントです。万が一合弁会社の事業が期待したほどの利益につながらなかったとしても、1社のみで取り組むときより損失額を抑えられます。

 

合弁会社のデメリット・注意点

シナジー効果を活用しながら、1社ではハードルの高い事業展開も可能にする合弁会社ですが、以下のデメリットもあります。

  • 参加企業間の方針不一致・トラブルが発生する可能性がある
  • 技術・ノウハウなどが流出する可能性がある
  • 意思決定が遅くなる可能性がある
  • パートナー企業が信用を失うと自社のレピュテーションも下がる

それぞれの詳細を見ていきましょう。

1.参加企業間の方針不一致・トラブルが発生する可能性がある

合弁会社は2社以上が関わって設立されます。共同で1つの企業を設立し事業を営むには、お互いの方針を合わせなければうまくいきません。

方針をめぐりトラブルが発生すれば、合弁会社の設立そのものが立ち消えることもあるでしょう。設立後に方針の違いが明確になった場合には、対立構造ができてしまい、業務がスムーズに進まない恐れも出てきます。

期待していたシナジー効果を発揮するどころか、損失につながりかねない事態です。

2.技術・ノウハウなどが流出する可能性がある

2社以上がそれぞれの経営資源を出し合いシナジー効果を発揮して、スピード感のある事業展開や、より多くの利益の獲得を目指すのが合弁会社です。提供する経営資源が技術やノウハウである場合、自社の重要な情報を他社へ明らかにしなければいけません。

これまで社外秘だった情報を明らかにすることで、技術やノウハウの流出も起こり得ます。情報流出を防ぐには、合弁会社の参加企業を精査することや、流出を防ぐために情報の扱いに関する規定を設けることが重要です。

3.意思決定が遅くなる可能性がある

合弁会社は対等な関係です。A社とB社で出資比率に差があるとしても、支配関係とは結びつきません。対等な関係はクリアな印象がありますが、その一方で意思決定しにくいデメリットもあります。

特に方針が違う場合には、お互いの意向をくんだ調整が必要です。調整が難航すれば、合弁会社の社内で対立関係が生まれることもあるでしょう。

対立関係が生まれると1つの物事を決定するのに長い時間がかかり、素早い経営判断ができなくなる可能性があります。

4.パートナー企業が信用を失うと自社のレピュテーションも下がる

パートナー企業が社会的な信用を失うと、影響が自社の評判にまで及ぶのも、合弁会社のデメリットです。制度上は別々の独立した会社ではありますが、1つの企業を共同で設立し、経営資源の提供をし合っているため、そのつながりに不信感を覚える人もいるでしょう。

合弁会社で自社の評判を傷つけないためには、あらかじめ参加企業についてよく調べておくことが重要です。

 

合弁会社設立を成功させる重要ポイント

合弁会社の設立で、期待しているシナジー効果を発揮し目標を達成するには、ポイントがあります。重要なのは「パートナー企業」と「出資比率」です。

1.パートナー企業の選定

合弁会社は2社以上の企業による共同経営でシナジー効果の発揮を目指します。1社ではできないスケールで事業が進む可能性がある反面、パートナー企業次第では合弁会社の運営が思うようにいかないかもしれません。

パートナーにふさわしい企業か適切に判断できるよう、候補となる企業の情報を入念に調べましょう。業界でのシェアや持っている技術などはもちろん、社風や経営上のリスクなどもチェックすべきポイントです。

一般に公開されている情報はもちろん、既に取引のある企業であれば、現場社員からの評判を聞いてみてもよいでしょう。

例えば自社とのシナジー効果が期待できる企業であっても、社風が合わなければ合弁会社での事業運営はスムーズに進みにくい可能性があります。

2.出資比率の調整・確認

契約するときには合弁会社へ参加する企業の出資比率を決めなければいけません。どの企業がどれだけ資本を出すべきかの調整は、難航しやすい点です。基本の出資比率を押さえた上で、ケースごとに判断する必要があります。

合弁会社の出資比率は50%ずつにするのが基本

合弁会社の出資比率は特に決まっていませんが、等分で負担するのが基本です。2社で合弁会社を設立するときには50%ずつ出資します。

ただし事業内容・運営体制・提供する経営資源などをもとに、出資金に差をつけることもあります。例えばメイン企業とサポート企業が明確な場合に、メイン企業の出資比率を高く設定するケースが代表的です。

出資比率を決定する場合の注意ポイント

出資比率を決めるとき、影響するのは現金のみとは限りません。技術・ノウハウ・販路・設備・人材などの経営資源を提供する場合、現金による出資を少なく抑えるケースもあります。

現金のみで50%ずつ出資するのは分かりやすい方法です。実際にはA社は現金70%・B社は現金30%と技術・ノウハウ・製造ラインを提供し、50%ずつの負担とみなすこともあります。

出し合った現金や経営資源の合計が「同じ割合になっている」と双方で納得できる比率に設定するのがポイントです。

3.撤退条件の設定

契約書には合弁会社を撤退する条件を盛り込むことも重要です。合弁会社で始めた事業が必ず成功するとは限りません。撤退条件を設けていない場合、損失が膨らみ続けているにもかかわらず、撤退できなくなってしまいます。

また異なる方針であることが明確になっても、そのまま合弁会社の運営を続けなければならない事態も起こり得るでしょう。

「一定以上の損失額」「解消できない意見の相違」「契約違反」などを撤退条件として盛り込んでおけば、条件を満たしたことを理由に合弁会社からの撤退が可能です。

 

合弁会社設立の流れ

合弁会社設立までの流れも確認しましょう。

  1. パートナー企業を探す
  2. 基本合意の締結
  3. 締結条件の確認
  4. 合弁会社設立契約の締結

それぞれのタイミングですべきことを解説します。

1.パートナー企業を探す

他社とのシナジー効果を期待して合弁会社の設立を目指すときには、まずパートナー企業を探さなければいけません。このとき重要なのは、合弁会社の目的に合わせて企業を選ぶことです。

新規事業へ進出する場合には、その事業に必要な技術やノウハウなどを持っている企業をパートナーとすることで、成功の可能性を高められるでしょう。

このとき事業内容に加え、経営状況や社風なども確認します。十分な技術力を持っている企業であっても、社風が合わなければシナジー効果を生み出せない可能性もあるためです。

2.基本合意の締結

パートナー企業の候補へ合弁会社の設立について提案し、同意を得られたら、全体の方針やビジョンのすり合わせを行います。

どのような事業を実施する目的で合弁会社を設立するのか、合弁会社ではお互いにどのような役割を果たすのか、基本的な戦略やビジョンなどを明確にしましょう。

合弁会社の基本的な方針を共有した上で、考えられるトラブルやその対処法なども話し合います。決まった内容を書面にまとめ、基本合意書を取り交わします。

3.締結条件の確認

基本合意を結んだら、出資比率や利益の受け取り方法などの詳細について交渉し決めましょう。合弁会社の設立にあたり、必要な条件を1つずつ確認していきます。

このとき第三者から見て公平な条件となっていることが重要です。現金の出資割合と経営資源の提供が釣り合っているか、といった比較の難しい点で公平性を保つには、専門家へ依頼し判断を仰ぐとよいでしょう。

4.合弁会社設立契約の締結

全ての参加企業が条件に合意したら、その内容を盛り込んだ契約書を作成し、合弁会社設立契約を交わします。契約書に盛り込む内容の例は以下の通りです。

  • 目的
  • 概要
  • 株式の保有割合
  • 取締役会役員
  • 重要事項
  • 経費負担
  • 剰余金の配当 など

これらの他に、意図しない第三者が合弁契約へ参加するのを避ける目的で、株式譲渡を制限する項目を設けることもあります。

無事に契約を締結したら、契約書に定めた通りに合弁会社を設立し、事業を始めましょう。

 

近年の合弁会社設立事例

合弁会社を設立した事例もチェックしましょう。実際の事例を確認することで、合弁会社の活用について理解が進む内容です。

1.ヤマダホールディングスとミダックホールディングスの合弁事例

ヤマダホールディングスとミダックホールディングスは、2023年8月に合弁契約を締結しています。これにより設立したのが、株式会社グリーン・サーキュラー・ファクトリーです。

ヤマダホールディングスでは、家電を資源と捉え、買取家電のチェックやクリーニングなどを行いリユース販売を行っています。このような環境分野の取り組みを加速する目的で行われたのが、今回の合弁会社設立です。

ミダックホールディングスは廃棄物中間処理施設や廃棄物最終処分場の運営に関するノウハウを持っています。ヤマダホールディングスの目指す、家電販売を出発点とした循環型社会の実現を目指すパートナーとして最適でした。

合弁会社を設立することで、環境対応技術の開発や低炭素・循環型社会の実現などを目指すそうです。

2.コカ・コーラボトラーズジャパンとアクセンチュアの合弁事例

コカ・コーラ ボトラーズジャパンとアクセンチュアは2024年1月に合弁会社を設立するそうです。

設立予定の合弁会社に移管するのは、コカ・コーラ ボトラーズジャパンとコカ・コーラ ボトラーズジャパンビジネスサービスの以下の機能です。管理や事務・サポート業務などの合弁会社へ集約します。

  • 人事
  • 総務
  • 財務
  • 調達
  • カスタマーコンタクトセンター
  • 営業支援業務
  • IT など

加えて飲料ビジネスに関するデータ活用などのサービスを、コカ・コーラ ボトラーズジャパングループへ提供する役割も合弁会社が担います。データ活用を高度な意思決定や、高品質な製品・サービスの提供へつなげるための、合弁事例です。

またアクセンチュアは自動化ツールのプラットフォームや、専門的な人材などで、コカ・コーラ ボトラーズジャパングループの成長をサポートしていきます。

3.SBIホールディングスとマン・グループとの合弁事例

SBIホールディングスと大手資産運用会社のマン・グループは、2023年7月に合弁会社設立の基本合意を締結しています。

世界ではヘッジファンドや不動産などのオルタナティブ投資のニーズが高まっていますが、日本のオルタナティブ市場はまだ成熟していません。商品はありますが限定的で、機関投資家や一部の富裕層向けがほとんどです。

今回設立される合弁会社は、日本国内でオルタナティブ投資商品を開発し、個人投資家へ提供することを目的としています。「オルタナティブ投資の民主化」が目標です。

4.三井住友フィナンシャルグループとアトラエの合弁事例

三井住友フィナンシャルグループとアトラエは、2023年10月に合弁会社を設立しました。

金融機関という固定観念にとらわれない三井住友フィナンシャルグループと、組織力向上プラットフォーム「Wevox」を提供するアトラエが設立した合弁会社では、「SMBC Wevox」の提供を行います。

組織力をリアルタイムに把握できる「SMBC Wevox」を、三井住友フィナンシャルグループのネットワークで提供していくそうです。

 

まとめ

合弁会社とは2社以上が共同出資して設立もしくは買収する企業のことです。それぞれの企業の持つ強みによるシナジー効果を生かし、共通の目的に向かって事業を運営します。

設立した合弁会社が目的を達成し、利益を得るには、パートナー企業選びが重要です。期待するシナジー効果を得られる企業を選定することで、目標を達成できるでしょう。

ただし締結する契約内容が公平なものになっているかを、専門知識を持たないまま判断するのは難しいでしょう。全ての参加企業にとってプラスになる合弁会社の設立を目指すには、専門家の活用がポイントです。

合弁会社と同じように専門的な知識が欠かせないM&Aも、専門家のサポートを受けながら実施するとスムーズに進められます。IT業界に特化したM&Aのサポートを行っているM&A BASEでは、IT業界のプロフェッショナルだからこそのつながりと専門知識でM&Aをサポートしています。M&A BASEへ無料相談をしてみませんか。

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